霧の日に樹影を映した厳正寺の大銀杏
どんな伝承か
昭和初年頃の話。大森の厳正寺の境内には、六本もの銀杏の大木があった。新緑が山門や鐘楼を被い、秋に成熟した実が樹下に落ちると、檀家の子どもたちが喜んで拾い集めた。厳正寺は京都本願寺の旧末寺で、檀徒には享保の頃から浅草海苔を採取してきた旧家が多かった。銀杏の大木は海上からも望めるように聳え、霧が立ち込める日には空に樹影を見え隠れに映し出して、帰帆する漁師たちを幾人となく遭難から救ったという。この大銀杏は大戦の空襲で本堂もろともに焼失した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)