枕元に座る帯から上の見えない女
どんな伝承か
小山内薫が高等学校に通っていたころ、一家は麹町富士見町の家を売り、新築ができるまで麹町三番町の小さな借家に仮住まいしていた。ある晩、寝ていると胸に重いものがのしかかり、目を開けると枕元に女が座っている。古風な薄茶色の織物の着物と繻珍のような帯、金具の帯留までは見えるのに、いくらもがいても帯から上が見えない。手も足も動かず声も出ず、十五分ほど悶えた末に叫び声が出ると同時に体が軽くなり、女は消えていた。近所の噂では、昔この家の軍人が妻と妾を同居させ、虐待された妾が死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。