早瀬川岸で子を殺した女乞食
どんな伝承か
天明年間は飢饉が続き、空腹をかかえた者が南部遠野城下へ流れてきた。その中に三つ四つの子供を連れた女乞食がいた。子供が何か食べたいと泣きじゃくると、女乞食はやさしい声で、誰でも腹がへっているのだよ、泣くなとなだめ、子供はあきらめて黙った。それからしばらくして、女乞食は突然子供を抱えて早瀬川岸へ走り、石で子供の頭を殴り続けた。頭はざくろのように割れて死に、女乞食は死骸を川へ捨て、川で顔を洗うと何事もなかったように立ち去った。多くの者が見ていたが、あまりに不意で誰も手出しできなかった。その後、殺された子は河童に化身して川原で遊んでいたともいう。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学)
『怪談の科学――幻覚の心理を探る』は、中村希明が精神医学の立場から著した怪談の解説書である。新聞記事の幽霊騒ぎや体験談、民話の化かされ話、「浅茅ヶ宿」やハムレット、『四谷怪談』などの古今東西の怪談を取り上げ、その多くを高速道路催眠現象、感覚遮断、飢えや寒冷、睡眠や薬物による幻覚として説明する。生理的幻覚から精神変調時の幻覚までを四章で分析し、終章「怪談の論理」で恐怖と幻覚の仕組みと日本の幽霊の特色を論じる。