第一スタジオに響く女のすすり泣き
どんな伝承か
東宝撮影所の第一スタジオでは、昭和一七年、名の知られていない新人女優が同じ撮影所の男優との間に子を宿した。だが男の両親が結婚を許さず、周囲の目も冷たい。追い詰められた彼女はノイローゼに陥り、ある夜このスタジオで毒を仰いで命を絶った。以来、ここでラブシーンを撮ると、どこからともなく女のすすり泣きが漏れてくる、寝室のセットで撮影の合間や夜に大道具の者が横になっていると必ず泣き声がする、といううわさが広まった。神主を招いて祀ったものの、このスタジオは火災が二度起きるなど事故が絶えないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。