登野城の火魂は測候所の灯
どんな伝承か
火魂の噂で持ちきりだったころ、石垣島四ヵ村の登野城部落で、丑三つ時になると南の海岸寄りに毎晩火魂が現れるという話が広まった。見たのは夜遊びをする若い男女だった。部落総代を務めていた語り手の祖父は、真偽を確かめるため部落民を総動員し、証人の青年たちに、長い竹竿に結んだ提灯を火魂の見えた方角に立てさせた。やがて目印より左手に火の玉が現れ、左右に揺れて消えた。測候所の近くだと見た総代が幹事を使いに出すと、毎晩その時刻に天候観測で三階の屋上へ上がるときのランプの灯だと分かり、人々は胸をなで下ろしたという。
原典より
「測候所では毎晩いま時分、天候観測のために三階の屋上へのぼるので、そのときのランプの灯であることがわかりました。」—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。