穂の長さ六尺の大筆を注文した老士族
どんな伝承か
長野県松本町の士族児島啓は、更級郡更級村に住む六十を過ぎた老人であったが、全国の官幣・国幣の有名神社へ奉納する大幟に大書することを思い立った。かつて葛飾北斎が名古屋で達磨の大画を描いた故事になぞらえ、上京して穂の長さ六尺余、直径一尺五寸、目方五貫匁、墨汁一斗を含む大筆を筆匠高木寿頴に注文したという。墨を含んだ筆の総重量は九貫九百匁に達し、製造費は百余円にのぼったと当時の新聞が伝えている。
原典より
此の筆墨を含みたる時の重量は九貫九百匁にして、製造費の価一百余円なる由。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。