二人で眼が一つしかない双生児
どんな伝承か
明治七年頃のこととして、熊谷県下高崎駅本町二丁目の大沢一左衛門方で、一昨年の秋に生まれた双生児のことが新聞に報じられた。二人とも男児で、一人は右眼だけがあって左の眼は形もなく、もう一人は両眼ともになくのっぺらぼうのようで、ただ眼球の動くような形が見えるばかりであった。それでも二人とも余程丈夫に成長しているという。当時、広島県で目のない子が生まれたと図入りで報じられたばかりで、こうした不具は世間に間々あると見えると記され、枕二つに目が三つという諺をもじって、双子で眼が一つとは憐れにも珍しい片輪の寄り合いだと結ばれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。