女装して売色した男への珍判決
どんな伝承か
明治十四年、茨城県土浦町の料理屋鰭原倉吉に雇われていたお琴という女は、男だとか両性だとかさまざまに噂されていた。取り調べの結果、東京府士族で二十六歳の稲小登次という男だと判明した。少年の頃から女装を好み、男色の相手をさせられるうちに男らしさを失い、女と偽って勤めながら売色を重ねていたという。同年二月二十一日の夜には店に泊まった車夫染谷富次の寝床へ忍び込んでいた。四月六日、区裁判所は改定律令により、士族にあるまじき破廉恥として士族の籍を除いたうえ懲役九十日を言い渡した。
原典より
茨城県土浦町の料理屋鰭原倉吉に雇われているお琴という女は、変性男子だとか、両性だとか、いろいろな噂を立てられていたが、取調べの結果、同人は、全く東京府士族の稲小登次(二六)という、立派な男子であることが判明した。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。