不忍池の底から出た七尺の鯉の骨
どんな伝承か
その年の秋、下谷上野山下の不忍池の水を落としたところ、池底から七尺を超える大鯉の骨が現れて評判になった。この鯉には言い伝えがある。百十九年ほど前の安永元年、千葉の松戸で川をせき止めて漁をした際に六尺余りの鯉が捕れ、殺すのも気味が悪いので酒屋の桶へ入れておいたのを、近くの寺の僧が哀れんで買い取り、もとの淵へ放したという。四、五年後、同じ水系の利根川でさらに大きな七尺余りの鯉が捕れ、江戸へ売られたのを誰かが千住で買い取り、不忍池へ放生した。以来池は一度も水を替えておらず、他に大鯉の骨も記録もないことから、この骨こそその鯉だろうと噂された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。