狂犬に咬まれても注射を拒む豆腐常食の男
どんな伝承か
大正二年七月二十三日午後六時半頃、麻布区新広尾町三の八の木賃宿岡本屋に泊まっていた飴行商人の伴喜平三十六歳が、芝区本芝入横町二番地先で突然狂犬に右足を咬まれた。警官が駆けつけて狂犬を撲殺し、咬まれた喜平に治療と注射を施そうとしたが、喜平は自分には神様がついていて加護を受けているから注射など決して必要ないと言って承知しない。やむなく無理に伝染病研究所へ連れて行き、一応の治療と注射を受けさせた。この喜平は非常な変わり者で、平常まったく米飯を食べず、毎日豆腐を五丁ずつ常食として元気に働いているというので、人々を不思議がらせたという。
原典より
ただ、それだけの話では、別に興味もないわけであるが、この喜平という男は、非常な変り者で、平常少しも米飯というものを食べず、毎日豆腐五丁ずつを常食として、元気に働いているというので人々を不思議がらせたのであった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。