電車を恐れ続けて怪死した五歳児
どんな伝承か
七日の夕刻、千葉県市川町の停留所付近で幼児が不思議な死に方をした。市川警察署が死体を検視したところ、少しも外傷がないのでその死に不審を抱き、医科大学の木村博士に乞うて八日に解剖に付した。死んだのは同市川町市川の高橋杉次郎(仮名)の長男五郎(五歳)で、解剖の結果、何か恐ろしいものを発見したか、あるいは聞いたため、恐怖のあまり急死したものと断定された。心臓および血管の異状と内臓の畸形から推断されたものである。家人の話によれば五郎は日頃から病的に恐怖観念を抱き、ことに汽車や電車を極度に恐れ、数か月前に大人が電車に跳ね飛ばされる現場を見てからは、玩具の電車さえ怖がるようになっていたという。
原典より
七日の夕刻、千葉県市川町の停留所附近で不思議な怪しい死を遂げた幼児があった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。