夢告で見つかった三沢寺の梵鐘
どんな伝承か
静岡県富士郡柚野村の三沢寺には、維新のころ村の富豪清富太郎が家運長久を願って寄進した梵鐘があり、霊験があるとして寺宝にされていた。ところが明治十三年の春、この鐘が行方知れずになり、住職が手を尽くしても見つからなかった。それから五十年ほどたったころ、住職の井上恵密は、鐘は横須賀鎮守府の工場にあるという夢のお告げを受け、鎮守府長官へ調べを頼む手紙を送った。探すと果たして工場の中に鐘が吊られていた。軍艦迅鯨を造るため全国から地金を買い集めた中に紛れ込み、鋳つぶすのは惜しいと時報に使われていたもので、鎮守府は願いを聞き入れて寺へ返したという。
原典より
そこで、鎮守府の方で探索して見ると、果して工場内にその鐘が吊されていたのであった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。