大蛇と蜂に引き留められた明恵の夢
どんな伝承か
明恵上人の伝記『高山寺明恵上人行状』には、十二、三歳のころの不思議な夢が記されている。高尾を去ろうと思い立った上人は、自分は父母によって薬師仏にささげられた身だから、暇ごいをしてから出ようと考え、八幡大菩薩にも暇を告げた。するとある夜の夢で、高尾を出て三日坂まで来たところ、大蛇が頭をもたげて追ってきて道をふさぎ、八幡大菩薩の使いだと示した。さらに三、四寸もある蜂が飛んできて、大菩薩の仰せで引き留めるから帰りなさいと告げたので、上人は出るのを思いとどまったという。著者は、上人自身の迷いが夢に形をとって現れたものとみる。
原典より
又蜂の三四寸許なる飛来て曰く、八幡大菩薩の御使として留め奉るべきの仰あり、かへらしめ給ふへし云々、其後思ひ留り畢ぬ』(高山寺明恵上人行状)。—— 心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年))
『心霊現象の科学』は、小熊虎之助が心霊現象を科学の立場から論じた研究書で、序とあとがきに昭和四十九年四月の日付がある。コックリ・自働書記・読心術・憑きものなどを心理学で説ける偽心霊現象とし、精神感応・交霊・千里眼・心霊物理現象を真実の心霊現象として心霊現象研究会の報告から吟味する。福来友吉が能力者とした三船千鶴子・長尾夫人・高橋夫人・三田光一の透視と念写は山川健次郎らの実験と照らして疑い、あとがきでは井上円了以来の研究史を概説する。