長九郎家オクナイサマの火消し
どんな伝承か
土淵村字柏崎の片岸にある長九郎という家にも、例の寝られぬ座敷がある。十年ばかり前、隣家が失火し、風下に当たっていたので長九郎の家の屋根に火粉が落ちて所々燃え上がった。近辺は人家が立て込んでおり、助人はそれぞれ身寄りに駆けつけて人手が少なく、同家も危機に迫った。ところがどこから来たとも分からぬ十四五歳の小僧が屋根に駆け上がり、火を揉み消して廻った。火事が鎮まってから礼をしようと探しても姿が見えず、座敷に入って見ると、オクナイサマが汗みどろになって倒れていたという。この座敷に寝れば様々な悪戯をされて眠らせぬとも伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。