免許を持つ男の産婆がいた村
どんな伝承か
江戸時代から取揚げ婆さんという言葉はあっても、取揚げ爺さんという語は辞書にも見当たらない。赤ん坊を産ませる仕事は女に定まっていて、またそうでなくてはならないもののように考えられてきた。ところが昭和の世に、男の産婆が実在した。青森県南津軽郡藤崎町の藤本玄琢は、明治二十三年に産婆の免許を得て営業していたが、七十歳で死亡し、十七日に産婆名簿から削除されたと新聞が報じている。しかも同県には全国でも例のない男の産婆が二人おり、もう一人、東津軽郡小湊町の今田孫吉は六十七歳ながらすこぶる元気で、なお営業を続けているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。