四十年飯を断ち焼酎と黒砂糖で生きた魚屋
どんな伝承か
横浜市磯子区に、四十年ものあいだ飯粒を一つも口にせず、焼酎と黒砂糖、ラムネと茶だけで暮らしてきた魚屋がいた。榊善蔵、五十八歳。十八歳のとき胃癌にかかり東京や京都の名医にかかっても治らなかったが、黒砂糖の塊をなめると具合がよいのでそのまま続けた。以来毎日、砂糖二百目、ラムネ二本、焼酎二合と茶で通し、男六人女二人の子を育てながら町内を行商して回り、魚屋の善さんとして知らぬ者のない名物になった。医師会員が次々に訪ねて診察するほどの評判で、十全病院長も医学的に珍しいと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。