尾に油をつけた鼠が焼いた誕生寺
どんな伝承か
房州小湊の日蓮宗の寺、誕生寺での出来事である。ある年、住僧が灯火の下で書物を読んでいると、大きな鼠が出てきて灯の油に尾を浸しては去ることが七夜ほど続いた。鼠は油をなめるでもなく座敷を歩き回るので追い払うと、油に浸った尾が灯火に触れて燃え、鼠は庇の下の梁を伝って逃げた。仏の与えた災いではと住僧が不安に思ううちに火の手が上がり、僧たちが消そうとしたが大伽藍は焼け落ちた。住僧は、鼠の尾から出た火事は仏罰であり、修行に励まねばならないと語ったという。
原典より
そのとき鼠の尾が燈火に触れて、油に浸された尾に火が移った。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。