武徳殿の松原に現れた男
どんな伝承か
今昔物語集の一話として紹介される話である。光孝天皇の時代、八月十七日の月夜に、若い女三人が連れ立って宮中の武徳殿の松原を歩いていた。すると松の木の下から一人の男が現れ、三人のうちの一人を呼び止めて松の陰へ連れて行き、手を取って語り合いはじめた。残る二人の女は、話はいつ終わるのかと待っていた。原典の引用はここで中略となっており、この先の成り行きは記されていない。鬼が人の姿に化けて現れる話の例として挙げられている。
原典より
と、松の木の下に一人の男がでてきて、このうちの一人の女を引き止めて、松の木陰で、女の手を執って話をはじめた。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。