淵の底へ帰らされた若侍と鐘の音
どんな伝承か
秋田の仙北郡神宮寺の獄ノ下に洪福寺淵がある。この淵の底には鐘が沈んでいるといい、鐘ヶ淵ともいう。秋田の領主佐竹家の当主が船遊びをしてこのあたりにかかると、淵の水の中から手が出て、積んであった鉄砲の一挺を掴んで引き込んでしまった。当主が取り戻してこいと命じ、近習の半沢英二郎が水に飛び込むと、水底は明るくなり、大きな門と坂みちがあり、屋敷の玄関前に鉄砲が置かれていた。現れた白髪の老人は、鉄砲を渡すかわりに三日のうちにここへ立ち戻れ、違えれば半沢一族の命はないと告げた。英二郎は鉄砲を返上して暇を乞い、水底へ入ってそれきり姿を見せなかった。水底からは鐘をつく音がきこえたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃)
東北怪談の旅(山田野理夫)/飢饉の非業の死と怨念/巫女(イタコ)の口寄せ/座敷童子・河童の怪/東北各地の幽霊伝承