川底から鐘が鳴る沈んだ大伽藍
どんな伝承か
これも秋田の仙北郡花館の対岸の鶴羽形城に関わる話である。この城跡には洪福寺大明神と刻んだ石標がひとつある。洪福寺はそのむかし建立された寺の名で、鶴羽形城の城主安倍氏の菩提所であった。そこには蓮華台という池があり、この泉から噴き出る水を飲む者は不老不死になるといわれていた。不老不死の薬を求めて日本にきた秦の徐福も、蓮華台の霊泉の話を耳にしてこの羽後国まで足を伸ばし、しばらく逗留したという。洪福寺の大伽藍はある年の六月の大地震で御物川に陥没し、沈んだ跡は淵となった。この淵の上を船が通ると底の方から鐘の音がきこえ、それを耳にすると船は底に曳かれて沈んでしまう。そのために岸の上に石標を立てたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃)
東北怪談の旅(山田野理夫)/飢饉の非業の死と怨念/巫女(イタコ)の口寄せ/座敷童子・河童の怪/東北各地の幽霊伝承