桐岳寺の長老がつかんだ墓地の光り物
どんな伝承か
著者が学生だったころ、郷里の松江の桐岳寺の長老が、ある夜更けに庭を歩いていると、裏山の墓地の方から本堂の脇へ向けて、すぐそばを光るものが飛んで行った。躍りかかって手でつかみ取ってみると、何かは分からないが冷たくぐにゃりとして、豆腐を握りつぶしたような手ざわりで、ひどい腐臭がしたので、すぐ水で手を洗った。墓地から飛んで来たところを見ると、あるいは死人の脳味噌だったかもしれないと、長老は語ったという。
原典より
躍り蒐て手で掴み取って見ると、何かは知れぬが冷たいグニャリとしたもので、豆腐でも握りつぶした手觸りで、甚だしき腐臭のするものであつたから—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。