棺の中で息を吹き返した五箇のおり婆
どんな伝承か
五箇のおり婆さんは若いころ死んで生き返った。親類が集まって入棺し、夜伽の最中に棺の中からうめき声がした。一同が大騒ぎになって棺の蓋を取ると、死人が息を吹き返していた。婆さんは年寄りになるまでよくあの世の話を聞かせた。冥土の入口の川を渡ろうとすると、向こう岸の恐ろしい人たちがわけの分からぬ唄をうたい踊っており、つられて自分もうたい踊った。夕日は笠をかぶって沈み、川原には花が咲いていた。渡ろうとすると来てはならぬと押し返され、とうとう押し負けそうになったとき、北の方で賑やかな太鼓と唄の声がしたので戻ったという。婆さんはその時から耳が遠くなり、声柄が変わり、あの世で覚えたという拍子のぬけた悲しげな唄をうたうようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。