棺の中で息を吹き返した五箇のおり婆
どんな伝承か
五箇のおり婆さんは若いころ死んで生き返った。親類が集まって入棺し、夜伽の最中に棺の中からうめき声がした。一同が大騒ぎになって棺の蓋を取ると、死人が息を吹き返していた。婆さんは年寄りになるまでよくあの世の話を聞かせた。冥土の入口の川を渡ろうとすると、向こう岸の恐ろしい人たちがわけの分からぬ唄をうたい踊っており、つられて自分もうたい踊った。夕日は笠をかぶって沈み、川原には花が咲いていた。渡ろうとすると来てはならぬと押し返され、とうとう押し負けそうになったとき、北の方で賑やかな太鼓と唄の声がしたので戻ったという。婆さんはその時から耳が遠くなり、声柄が変わり、あの世で覚えたという拍子のぬけた悲しげな唄をうたうようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。