二階へ上ってきた姪の足音
どんな伝承か
昭和五十五年のことである。当時一歳七か月だった姪が小児癌と診断され、母親とともに札幌へ行っていた。姪が死ぬ二日前の午前十一時ごろ、語り手と両親は、その子が自分たちのいる二階へ上ってくる足音を確かに聞いた。階下には誰もおらず玄関の鍵も閉まっており、三人で顔を見合わせたという。同じ夜、姪の三歳の姉は夜通し泣き続け、可愛がっていた犬は遠吠えをして餌を食べなくなった。犬は姪の亡骸が車で釧路に入ったと思われる時刻まで吠え続け、その後は葬式が終わるまで声を出さなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。