耳環の光で露見した砦の老夫婦
どんな伝承か
十勝の厚内と釧路の音別の間、トンネルを出たあたりにオトべという場所があり、砦の跡が残る。昔ここに爺さんと婆さんが住んでいたが、ある晩、水を汲みに川へ下りた婆さんの耳環が月の光を受けて光ったため、厚岸から攻めてきた者に射殺された。爺さんが出てこないので、厚岸方は海岸に砂を盛って鯨の形を作り、魚の皮を置いた。烏が集まって騒ぐのを見た爺さんは鯨が寄ったと思って砦を出たところを射られ、音別のあたりまで逃げて死んだ。勝ち誇って沖を漕ぐ厚岸勢は蜂の大群に襲われ、一人を残して刺し殺されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。