沼の底へ沈んだ洋裁の師の夢
どんな伝承か
昭和四十二年のこと。尊敬していた洋裁の加藤先生が乳癌の手術をし、東京の聖路加病院から札幌の国立病院へ移られたと友人から聞いて二日目、語り手は三十八度の熱を出して苦しく寝込んでいた。すると大きな沼の底へどんどん吸い込まれて落ちていき、初めは暗かったのが一面明るくなって、加藤先生が白いベールに白い花束を手に持ち、ほほえんで現れた。「先生お元気になったのね」と尋ね、ふわりふわりと飛び回っているようだった。そのうち先生は急ににこにこしたまま底へ底へと引き込まれて消えてしまい、大声で呼んだら目が覚めた。その日、先生の訃報が入った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。