止まった柱時計と消えた提灯
どんな伝承か
昭和二十六年の冬、真夜中のこと。二歳の姪が重態だというので、筆者は甥の弘と雪道を踏んで舟津の岡田医院へ往診を頼みに行った。戸を叩くと奥さんが出て、用件を聞いて奥へ引っ込む。玄関で待つ二人は、そろって柱時計を見上げていた。あと少しで一時を打つ、いま鳴るかと見つめていたところ、五十九分を少し過ぎたあたりで振子がすっと止まってしまった。不吉なものを感じながら医者を中にして歩き出し、舟津と館の中ほどの千代ヶ崎にさしかかると、風もないのに弘の提灯が消えた。姉の家に着いたとき姪は虫の息で、手当ての甲斐なく息を引き取った。
原典より
二年ほど前、五所川原市の近郊を採訪していて、和島秀子さんという四十すぎの主婦から、死んで生き返ったという人の話を聞くことができた。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。