雨の窓辺に立ったとみねえや
どんな伝承か
大学に入って世田谷の太子堂でアパート暮らしをしていた小倉嘉子は、ある日昼寝の最中に窓ガラスを叩く音で目を覚ました。外は雨で夜になっており、髪をびしょ濡れにしたとみねえやが立っている。ねえやは先ごろ猫いらずを飲んで自ら死んでいた。墓から出てきては駄目だと言いながら頭を撫でると、こんな雨の晩に一人では寂しくていられない、と細い声が返る。その声で目覚めると外は真昼だった。窓を見て凍りついた。そこは二階だったのである。夏、嘉子は自転車で十二キロの道を走り、墓標もない土饅頭を訪ねた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。