産後の病室を訪れた亡母
どんな伝承か
昭和四十六年十二月、危篤の母を実家で見守っていたが、長男が火のついたように泣きやまず、身重の体で自宅へ戻った。翌日、母は持ち直したと聞いて安堵した矢先に産気づき、帝王切開で長女を産む。生後七日目の夜、消灯前にうとうとしていると、風もないのに開いた扉が鳴り、カーテンが揺れた。起き上がると母が戸を開けて入ってくる。よくなったのかと呼びかけると笑顔でうなずくが、近づこうとすると廊下へ消えた。母の死を知ったのは二十日後で、実は出産の一時間後に息を引き取っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。