亡き妻の絵にとまる黒いアゲハ蝶
どんな伝承か
昭和二十四年のこと。浄瑠璃好きの祖母は近所の仲間五人で伊豆の温泉宿へたびたび出かけ、一晩中弾き語りを楽しんでいた。祖母が急に脳溢血で亡くなった数日後、残る仲間四人は祖母の戒名を書いた紙を懐に入れ、連れ立って定宿へ行った。いつもの離れの部屋に通されると、番頭は五人分の座布団と茶を運んできた。四人だと言っても番頭は、玄関を入られた時確かに五人いらして、山口さん(祖母の名)も皆さんの後から入って来られたと言い張る。仲間はぞっとした。祖母の魂が一緒に来たくてついて来たのだろうか。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。