壁に立つ黒い影の人
どんな伝承か
或る夜、家の人が集まって話をしていると、そのうちの一人が立って次の間を通りかかり、壁に人が立っているのを見た。黒い影のような人で、どちらを向いているのか一向に分からず、ただぼうっと黒い影のようであったが、衣服の縞ははっきり見えた。不思議に思って手で壁をさすってみたが何もなく、その影が自分の手に映った。同じような話がもう一つある。或る人が夜更けて家へ帰り、月夜に入口の戸を開けると、敷居のところに黒い影のような人が突っ立っていた。手でなでても何もなく、やはり衣服の縞がはっきり見えていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。