家賃六円の血まみれの婆さん
どんな伝承か
高知県高知市の潮江、上役地に良い貸家が空いているというので、父と二人で見に行った。家主は唐人町の料亭鏡水楼で、畳数から見て家賃十四、五円はする家が、わずか六円だという。この家はもと弘岡にあり、金持ちの婆さんが一人で住んでいたが物取りに殺され、無住になっていたのを鏡水楼が買い、今の場所へ建て直したものだった。建てた後に婆さんの幽霊が出るようになり、夜中に二階の梯子段の上の踊場に、血まみれの婆さんが座ってにやにや笑っているという。借り手がつかず空家になっていた。語り手一家は平気で住み、三年目に家賃を上げられて出るまで、何の異常もなかった。
原典より
昭和十九年の冬に、長患いしていた七十四歳になる私の祖父が危篤状態になり、子どもや親戚の人たちが枕元に集まった。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。