西丹仲山の墓へ向かう白衣の女
どんな伝承か
大正十年頃の話。高知県、今の高知学園の南のあたりで、語り手が子供の頃、夏に川で魚を捕っていた。近くに西丹仲山という、武家の代々墓らしい立派な墓が五つほどある山があった。夜九時半頃、目のはしに白いものがすっと映り、振り返ると真っ白い着物に腰まで届く長い髪の上品な女が、しずしずと歩いてくる。頭の上にはろうそくのような明かりが燃えていた。女は土橋を渡り西丹仲山の墓の方へ行った。近くの西本家の者と提灯をつけて墓地を見に行ったが、何もなかったという。
原典より
昭和十九年の冬に、長患いしていた七十四歳になる私の祖父が危篤状態になり、子どもや親戚の人たちが枕元に集まった。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。