囲われた部屋に現れた老婆の霊
どんな伝承か
新聞記者である筆者が、仙台の連心寺櫻恩寺の一室に起居していたことがある。夏の夜の二時頃、隣室の障子を開けて便所の縁側へ下りようとした刹那、一人の老媼が自分の前に跪き、何か言おうとするのを見た。白衣蓬髪のその姿は、一瞬のうちに空中へ消えた。不思議に思いながら用を済ませて部屋へ戻り、一睡した翌朝、門前の者が訪ねて来た。昨夜二時、前々住職の妾であった老婆が、寄る辺なく来宿していたが老病で亡くなったので、住職の墓の側に葬ってほしいと言う。その老婆が囲われていたのは、筆者の寝ていたその部屋であった。それで昨夜の老媼の正体を知ったのだという。
原典より
予(新聞記者)が仙台町連心寺櫻恩寺の一室に居たりし事あり、夏の夜二時頃隣室の障子を開けて便所の縁側へ下りやうとする刹那、一老媼の予の前に跪まりて、何事か云はんとするを見し一瞬間に白衣蓬髪の老媼は早や空中に其影を消した。—— 幽霊は語る(梶天真・幽霊研究・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・幽霊研究・大正〜昭和(戦前))