棟梁の足を呑む金色の小蛇
どんな伝承か
美馬郡郡里村の池の浦で、神社の社殿を建てに来ていた大工の棟梁が、敷地の横の池のそばに石を置いてカンナの刃を研いでいると、金色の小ヘビが足の親指をなめていた。小さなヘビと気にもとめずにいたが、翌朝も同じヘビが池を渡って来て親指をなめる。それが六日続き、七日目にはそろそろと親指を呑みはじめ、中指も小指も呑んで、ふとももまで呑み上がった。驚いた棟梁がカンナの刃をあごに打ち込んで押し下げると、ヘビは足を吐き出して池深くもぐった。三日目の朝、池には五升ダルほどの大ジャの死体が浮かび、村人は死体を埋めホコラを建てて蛇塚とあがめたという。
原典より
池の面には五升ダルほどもある大ジャの死体が浮んでいたのだ。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。