がぜんどうの怪火と自動車
どんな伝承か
徳島市八万町には、昔城の鎮守として建てられた祠にちなむ、がぜんどうの怪火の話がある。酒樽ほどの大きさの火が毎月四と九の夜にふわふわと宙を飛び、それを見て気を失った者も多かったという。大正の初め、この話を聞かされていた男が深夜に通りかかると、背後が急に明るくなり、二つの大きな目玉を持つ怪物がものすごい勢いで追ってきた。必死に逃げたが道から転げ落ちて気を失い、翌朝近所の者に助けられたものの寝込んでしまった。追ってきたのは自動車だったと説明されても、男はなかなか納得しなかったという。
原典より
追っかけて来た怪物が、自動車であったことを説明してやっても、なかなか承知しなかったそうである。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。