家賃の安すぎた質屋の屋敷
どんな伝承か
新劇の先駆者小山内薫が『中央公論』に自ら書いた体験である。赤坂で火事に遭って芝の裏長屋へ移った彼は、大阪から出てきた姉一家が借りた広大な貸家へ同居することになった。母屋のほかに土蔵と離屋があり、敷地には石造の蔵と稲荷の祠まであるのに家賃は驚くほど安い。夫人は深夜に玄関を叩く音や、通るはずのない列車の音を聞き、雨の夜には土蔵の壁に人の顔を見た。ある晩、二階でうたた寝をした夫が下りてきたと夫人は思ったが、本人は上がったきりだった。一家は間もなく転居する。その家は担保流れで銀行に取られた質屋のもので、主人は土蔵で首を吊りそこね、庭の井戸に身を投げていた。
原典より
新劇運動の先駆者小山内薫の体験記だから、だいぶ古い。—— 第四の世界―心霊現象のなぞをとく(田中千代松・1960年(昭和35年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
第四の世界―心霊現象のなぞをとく(田中千代松・1960年(昭和35年))
『第四の世界―心霊現象のなぞをとく』は、田中千代松が一九六〇年に著した心霊現象の解説書である。予言・千里眼・霊聴・霊言・自動書記・サイコメトリーなどの霊能から、幽霊の体験記、物質化した霊像、叩音、物体移動、心霊写真、ルルドの奇蹟、起訴された霊媒、デューク大学の超心理学までを、日本と欧米の事例を交えて扱う。東京大学教授後藤以紀の推薦文とまえおきに続く十六章で構成し、むすびで心霊研究のあり方を論じる。