相次いで見つかった切り刻まれた衣類
どんな伝承か
大正五年一月六日、香取町の道から少し入った所に、刃物で切り刻まれた衣類が捨てられているのが見つかった。飛白の男羽織、銘仙の男羽織、少女用の赤い唐繻子の品で、刑事が持ち主を当たると、飛白は太田校長の盗まれた品、銘仙は殺された日まで菅谷武雄が着ていたもの、唐繻子は高橋家の娘おたつのもので、駐在所の妻君が仕立てた品だと分かった。高橋きんや府馬の酌婦おはつの着物も切り裂かれていた。同じ月の三十一日には高森開墾地でも太田校長の品がずたずたにされて見つかり、そばの菓子袋から、背の低い鳥打帽の男が菓子を買っていたことが知れた。
原典より
修忍な破壊性を帯びた兇賊は何者であらう。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。