監物邸に現れた炎の怪物
どんな伝承か
積善寺から不動の木像を持ち帰った山内監物は、邸の門脇に台を作ってその上に据えた。監物は藩主の一族で三万石を領し家老格に扱われる片意地な男で、村役人の家で起きた怪異も気に留めなかった。だが晴れた日の夕方、突然の雷鳴と稲光が起こり、邸の上から火の団が四方へ飛び散ったと村人は語り合った。三日後には海鳴のような音が一日中鳴り、翌日は旋風が百姓屋の物置小屋を巻き上げて春日川へ落とし、数日後の暴風雨では山崩れで農家三軒が埋まった。ある夜、門の建物に近づいた監物の前に身の丈一丈ほどの炎を吐く怪物が現れる。斬りつけると倒れたのは不動を乗せた台で、同時に邸の裏山が燃えあがった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が書いた怪談・奇談の短編集である。著者が「私の村」と呼ぶ土佐の海村の迷信を語る「鷲」のほか、高岡郡や長岡郡、野根山など土佐の話を多く含み、越中の放生津や立山、銚子の利根川口、京の寺町、摂津の味泥、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の妖術を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人や土地の人から聞いた話として語る篇もある。