麹町の裏店に居ついた病の女
どんな伝承か
麹町の裏店に住む独り者の甚九郎は、近郷近在へ小間物の行商に出るのが本職で、疲れた日や天気の悪い日でなければ店の戸を開けなかった。ある春の夕方、客もないので煙管をくわえてうとうとしていると、重苦しい物音がして、店の上框に若い女が黙って腰を下ろしていた。前かがみで額に手をやったまま小半時も動かない。声をかけると、目まいがして倒れそうになったので断りもなく店先を借りた、この上は今晩一晩泊めてほしいと言う。見知らぬ一人旅を泊めるのは憚られたが、女が三分の銭を差し出したので甚九郎は折れた。薬を飲ませ粥を炊いてやると、女は貸した蒲団にくるまってすやすやと眠った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ・明治末~大正期(推定))