格子戸から覗いていた常磐津の師匠
どんな伝承か
新橋の芸妓花千代が語った話である。麻布の市兵衛町に常磐津の師匠をつとめる老婆がいて、新橋方面へも出稽古に通っていた縁で、花千代も弟子の一人だった。その老婆が病を得て亡くなり、数日後、遺族が一枚の葉書を持って花千代のもとを訪ねてきた。差出人を方々探したが分からないという。葉書には、見舞いに伺ったところ、細く開いた格子戸に挟まれるようにして痩せた老婆が家の中をのぞいていたので、入りづらくてそのまま帰った、早く全快されるように、と書かれていた。その日時は、老婆が息を引き取った時刻とぴたりと重なっていた。
原典より
* 謎の客 (240)* 天井からぶらさがる足 (243)* 奇蹟の処女 (244)* 殺した実母が迎えに来る (246)* 母の変死 (247)* 石地蔵の首を締める (250)* 池の中の…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年))
日本怪談実話(田中貢太郎)/幽霊と怪光の実話/怨霊と祟り・因果/死の前兆と怪音/各地の怪異実話