銃で果てた前住人の老母
どんな伝承か
四歳の娘が二階の老婆の話をしたので、母親は近所を回って前の住人のことを尋ねた。その家には母と息子の二人が住んでおり、息子は勤めのかたわら猟を好んだ。母親は熱心な日蓮信者で、殺生に出かける息子が我慢ならず、ある日出がけに銃を取り上げようとした。そのはずみで銃の端が脇腹に当たって傷を負い、それがもとで亡くなったという。息子は近所に顔向けできず、二か月前に慌ただしく引き払っていた。しかも老婆が傷を負ったのは、娘が入り浸っていた二階の六畳の部屋だった。
原典より
* 死んでいた狒々 (282)* 三度笠の旅人 (285)* 千疋猿の鍔 (286)* 屋根の上の黒猫 (287)* 左甚五郎作の大黒天 (288)* 十二号室の怪異 (290)* 一つの不思…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。