心だけの己れが見た枕元
どんな伝承か
大阪府豊中市の小堤徳行さん(六十九歳)は、二十七歳のとき脊椎カリエスに肋膜炎を併発して危篤状態に陥り、体外離脱を体験した。頭がくるくる回り、蜘蛛の糸のようなもので地面に引きずり込まれる感覚のあと、気体のような「心だけの己れ」になって肉体から抜け出たという。薄いベールを通して舞台を見るように、親族や医者が深刻な顔で泣いたり話しかけたりする様子がはっきり見え、話す言葉も聞こえた。死後の処置や葬式の準備が話し合われる中、生き返った後に確かめると、見聞きした光景はすべて事実の通りであったという。
原典より
肉体がともなっていないので、気体のような心だけの己れになっていました。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。