花畑の手前で越えられぬ垣根
どんな伝承か
札幌市のN・Rさんが伝えた、父親の体験である。一九七五年、七十四歳だった父は風邪をこじらせて肺炎になり、激しい発作で息ができなくなって意識を失った。酸素吸入でようやく息を吹き返したとき、こんな話をしたという。苦しかったのが急にすっと楽になり、目の前に明るく広いお花畑が開けていた。向こうの家には観音のように神々しい天女がいて、こちらを見ている。近づこうとすると途中に垣根があり、どうしても越えられない。何度試しても越えられずにいるうちに、名を呼ぶ声がして戻ってきた。意識が戻ったとたん、また苦しくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。