お花畑を見たと告げた京都の芸妓
どんな伝承か
作家の水上勉が心筋梗塞で倒れて生死の境をさまよったのと同じころ、京都の七十歳ほどの芸妓も心筋梗塞を患っていた。その人は水上に電話をかけてきて、京ことばで、お花畑を見た、それはきれいだったと告げたという。水上自身が見たのは、闇の迫る暗紫色の中を黒い川が流れる薄暗い光景で、花畑はどこにもなかった。それで彼は、きれいな花畑でよかったなあ、とだけ返しておいたと振り返っている。
原典より
ちょうどぼくと同じ時期に心筋梗塞になった京都の芸妓さんがいて、もう七十ぐらいの人なんですが、その方が電話をかけてきて、…—— 証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。