心霊相談所で亡き義父の霊を招く
どんな伝承か
語り手は妻いせ子と息子の麟太郎を連れ、市ヶ谷一口坂下にある心霊相談所を訪ねた。省線の市ヶ谷駅で降り、濠沿いに四百メートルほど歩いた先の和洋折衷の木造家屋で、階下の一間が控所になっており、朝から先客が座っていた。二時間ほど待って二階へ上がると、四十近い小太りの女霊媒の中西りかと、白い髯を垂らし袴をつけた岡田熊次郎が並んで座っていた。招く相手の名と没した土地と日付を書いた紙を渡すと、岡田がそれを読み上げる。とたんに霊媒の顔が苦悶に歪み、苦しい、もう駄目だとうめき出した。語り手が三女いせ子の夫だと名乗るとようやく正気の答えが返り、妻が名乗ると幼名で呼んで、よく来てくれたと応じた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年))
『日本神異見聞伝』は、笠井鎮夫が昭和四十九年に著した霊異の見聞記である。第一篇では、大正期に大本で鎮魂帰神を受けた著者が、霊媒による死者の招霊や狐霊・竜神の託宣、霊石の発掘などを研究会での語りの口調で伝える。第二篇では、慶応三年のええじゃないかのころ尾張・遠江・駿河・美濃・丹後などで起きたお札降りを、旧家の古文書や郷土史家の便り、著者の現地調査から記録している。