鳥居の上に置かれた藩札の包み
どんな伝承か
明治三年十月六日の夜、鎧の夢に牛のような角の生えた獣が長壁大神の使いとして現れ、気が向いたときに宮へ参れば小遣い銭を下さるという大神の言葉を伝えて帰った。九日、夢を不思議に思った鎧が宮へ参ると、鳥居の横木の上に雁皮紙の包みがあり、篠の葉を熨斗代わりに挿したその中には藩札二貫五百匁が入っていた。夢で告げられた小遣いだと押しいただいて拝んでいると、姿は見せないまま宮の内から大神の声がして、暇があれば折々参ること、髪をちょんまげに結うこと、母のお産は軽いので案じなくてよく、あとで守り札を授けることを告げたという。
原典より
○九日、鎧女六日の夜の夢の御告をあやしく思ひて、長壁大神の宮へ参るに、鳥居の横木の上に、何やら雁皮紙に包たる物ある故、取上て見るに中程を一処くくりて、篠の葉をのしの代りにさしたり。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。