栓をした瓶に色の違う神水
どんな伝承か
高野寿直の報告である。十四歳の頃、胃腸が悪く母がいろいろ手当をしてくれても治らなかった。当時一家は酒田に住んでいたが、ふと年恵の話を聞き、母は身を浄め物忌みを厳守して鶴岡八日町の長南家へ参り、例の神授の薬水を戴いて帰った。数回服用するうちに、慢性の胃病はすっかり全快したという。この神授の薬水は、こちらから瓶を持参し、栓をしたまま年恵に渡す。すると年恵は十本でも二十本でも神前に並べてしばらく祈願をする。それだけで一度に御神水が瓶の中に出現し、薬水の色は患者ごとに皆異なった。年恵は一人ずつ患者を呼んで瓶を渡し、心得などを詳しく話して聞かせたが、心掛けの悪い者には神水が下りなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。