丹田から名告った艮の金神
どんな伝承か
元旦の幻視ののちも直はたびたび不思議な体験をしたが、ある日突然、全身が震えて神気が身に降りる兆しを覚えた。前例のないことで理由もわからず、翌日も同じ兆しがあったので、神の心か、人の霊か、狐狸かと疑った直は、身構えて体の内の何者かに名を名のれと問いただした。すると丹田から霊気が湧き上がり、唇がひとりでに動いて、自分は艮の金神、元の国常立尊で、汝の身体を守るという声が出た。直はなおも問い詰め、罵り、願い、からかって自ら審神を尽くし、憑いた神が偉大な正神だと推し量り、先に見た大神たちは天照大御神らで、その霊地は綾部本宮の神域だったと悟ったという。
原典より
その時、一道の霊気湧然として丹田より起り、呼吸もとまるかと思はる 程こそあれ、唇辺先づ動きて、声音之に伴ひ、吾はこれ艮の金神元の国常立の尊、汝の身体を守るぞと玉へり。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。