畦道で声をかけた相手は二足の獣
どんな伝承か
油木の集落で怪物を見た三人目は、農業の伊折茂さんだった。丸崎安孝さんの目撃から一週間後、昭和四十五年七月三十日の夜八時、畦道をこちらへ歩いてくる人影を親戚の老婆と思い込んで声をかけたところ、振り向いたのは恐ろしい形相の怪物で、じっと睨みつけていた。伊折さんの話では、それは二本足で立ち、背丈は人と変わらぬ百六十五センチほど、全身は黒褐色のふさふさした毛に覆われ、頭の毛は角刈りを伸ばしたようだったという。以後も目撃は絶えず、車のライトに目を青白く光らせて腹を掻く姿や、蕨の茂みに背を向けて坐る茶褐色の姿が報じられた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の四次元(鈴江淳也・心霊・四次元・1973年(昭和48年))
『日本の四次元』は、鈴江淳也が昭和四十八年に著した超常現象の取材記である。幽霊の出る家や競馬場、古武士の怨念、守護霊、心霊写真、新幹線の四次元地帯、心霊治療、物品引き寄せ、てのひら療法、比婆山の怪獣やツチノコ、死後も占う易者犬などを、当事者を訪ねて聞いた話として記す。「幽霊と怨念の世界」から「動植物の驚異」まで六部に分け、あとがきで大陸書房刊『日本の奇談』『現代の怪奇』に続く第三弾と述べ、問い合わせ先を挙げる。