深泥池の手前で消えた洗い髪の女
どんな伝承か
昭和四十四年十月六日の午前一時過ぎ、京都のタクシー運転手岸光男は、祇園で拾った客を京大病院の前で降ろした直後、長い洗い髪を肩まで垂らした四十歳ほどの女に乗せてほしいと頼まれた。行き先は深泥池のそば。走りながらミラーをのぞくと、女は血の気のない死人のような顔で、病院の消毒薬に死臭の混じった匂いを漂わせ、こちらをにらみつけていた。深泥池の南三百メートルほどの三差路で行き先を尋ね、振り返ると、後部座席の女は消えていた。駆けつけたパトカー四台が一時間捜しても、走行中に落ちた形跡はどこにもなかった。
原典より
今まで乗っていた女の姿が消えているではないか。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。